日本発オーダーメイド犬用シューズ「Dogsoxx」は、世界初の 3Dプリンタでつくるオーダーメイド犬用シューズとして数々のメディアで取り上げられ、犬用シューズとして特許も取得しています。月に一度の予約注文では数分で枠が埋まってしまうほどの人気シューズ、その舞台裏では弊社の Original Prusa が活躍しています。

犬用靴作りのきっかけ

当時飼っていた愛犬の足のトラブルをきっかけに、愛犬用シューズの開発を思い立ったという千葉さん。もともとはマーケティング会社を経営する千葉さんは、靴を作ったことも、3Dプリンタの実物すら見たこともないほどものづくりとは縁遠かったといいます。脚の筋肉の衰えや肉球が硬くなってしまったことが原因で、うまく歩けず塞ぎ込むようになってしまった愛犬。どうにか元気にもう一度歩いてほしいとAmazonで見つけた犬用シューズをいくつか試してみるも、どのシューズも合わず脱げてしまうものばかりでした。

それもそのはず、日本で飼われている犬の7割が小型犬と海外の飼育犬サイズと大きく異なるにもかかわらず、日本で販売されている犬用シューズはほぼ海外製、日本で小型犬用のシューズを探すことは困難なことに気づいたのです。最期はほぼ寝たきりになっていた愛犬が老衰で亡くなったあと、新しく迎え入れた愛犬には「若いうちからシューズを履かせて肉球を守ろう」と決意したそうです。

そこから千葉さんの犬用シューズ制作の旅ははじまりました。「ゴム風船のような市販のシューズを購入してみるも、脚を伸ばした時に脱げてしまう。よく観察してみると脚を伸ばした時に遠心力で脱げてしまう構造になっているのが原因だったんですね。日本の足袋を発想にシリコンのラベルをはってホールドできるようにし、またクロックスのようにさっと履けるようなイメージも合わせました。」と市販のシューズに手を加えたところ愛犬の脚にフィットし、それから毎日散歩に履かせて行くようにしたそうです。他ではあまり見かけないデザインだったこともあり、他の飼い主さんからの注目を集め、犬用シューズに対する不満や、夏のアスファルトの熱や路上の危険物から愛犬の足を守ってあげたいという数多くの声を聞き、商品化することでそのような愛犬家の悩みを解消できるのではと思いついたそうです。

Dogsoxx 独自開発の道のり

「はじめは射出成形でシリコンで作ろうと、金型を作ってくれる業者を見つけるも出された費用はひと型約300万円。様々な犬にあう型をつくるには金型をいくつも作らなければならず、別の方法を考えざるをえませんでした。」

ちょうどその頃、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、千葉さんの会社でも自粛モードが余儀なくされ「じっとしていられるタイプでもないので、ちょうど時間ができたこの機会に3Dプリンタを勉強して試作品を作ってみよう」と人生で初めての3Dプリンタを購入したそうです。

初めて購入したプリンタは中国製の5万円程度のプリンタ。それでは思ったものが作れなかったため、2台目に購入したのは50万円ほどする台湾製のプリンタ。それでも自分が思っているものが作れない、、そんな中、YouTube や Twitter などでよく見かける「最初からPrusaにしておけばよかった」、その言葉を信じて Prusa MK3S を購入したのです。

「するとものすごくよくフィットし、デザインもいいし動きも音もいい。音がなんせかっこいいですね。MINIが出たので、MINIだったら場所も取らないので並べて工場みたいにできるなぁと、そこからどんどん MINIが増えていきました。」音も静かでスペースも取らず、日本の住宅事情にあっているとも教えてくれました。

これだ!という一足に辿り着くまでの道のり

まず技術的な面でそもそも綺麗に積層するのが難しかったという千葉さん。「素材選びも、いろいろなTPUを試し、柔らかすぎたり破れたりを繰り返しましたが、できないとは思わなかったですね。失敗してもまた制作し『産む』というプロセスが楽しかったです。」

障害にぶつかっても YouTube や Twitter、コミュニティなどを活用し、独自で調べては進め、またシリコンゴムやマジックテープを接着する接着剤も20-30種類のものを試したりと試行錯誤の連続だったと言います。売れては MINIを増やし、シューズの売上は MINIに変わっていったと笑います。

「Printablesのコミュニティグループ『Prusa Community Japan』には、困ったときにいつも助けてくれるメンバーがいるので助かっています。問題を解決したいときにいつも迅速な答えがもらえます。このようなコミュニティが答えてくれる場としてあるのは、すばらしいなと思います。」

3Dプリンターで作る犬用シューズとは

Fusion360で独自に作成したデータに、それぞれの犬の足のデータを入力します。カスタマーからは、縦横脚の外周 3サイズに加え色々なアングルからの写真を送ってもらい、毛の量も考慮しながらモデリングをしていきます。靴のアッパー素材およびソール素材はTPU、0.6mmノズルで積層は0.1mm。

積層が目立たないフィラメントを使用し、一足にかかる印刷時間は大体2時間。その後、プリントされた筒状の本体をカットしたり貼ったりと、半分は細かい手作業が加わり完成させるそうです。

また 前方部分内側につけるシリコンラベルも自社で制作しています。0.1mm積層で作られた型は Prusament のPLAやPETGを使用しています。

また同じくPrusament はマジックテープを固定するためのクリップにも使用しているそうです。「Prusamentと他社のフィラメントとではシリコンの出来上がりに差がありますね。」

Dogsoxxの需要から見据える今後

現在6色展開している同商品。1日に2、3足しか作れないため、月30セットほどと受注制限しているそうですが、いつも受注開始数分でその枠は埋まってしまうほど人気がある Dogsoxx。千葉さん自身は Prusaとの出会いによりオーダーメイド犬用シューズという生産販売を実現させましたが、同様に、プリンタ1台で内職ができる仕組みやネットワークをつくり、社会的就労が困難な人たちにも働ける可能性を広げられるような雇用作りや、社会貢献の取り組みを目指しているそうです。

ウェブサイト: dogsoxx.jp