株式会社 crossDs japan は、世界初オーダーメイドパンプスをサブスクで提供するサービス「AYAME」を手がけています。このサービスは3Dスキャンしたデータを元に、一人ひとりの足に合わせた木型を3Dプリンターで作り、靴の製作を行なっています。

ストーリー

もともと学生時代はロボコンにも出場していたという社長の諏訪部さん。IT業界で10年働いたのち 3Dプリンターの普及とともにまたものづくりをしたいと考え出したとき、たまたま一緒に働いていた女性から自分の足に合う靴がないという悩みを聞いたことをきっかけに、「世界の人口増加とともに女性の社会進出も増え、靴は成長産業でありイノベーションできないか」と3Dプリンタを使った靴作りを考え出したそうです。

クチコミで購入してみたPrusa

はじめての 3Dプリンターは日本製のものから始まり、その後中国製の他社メーカーを4台購入するも、すぐに壊れては修理の繰り返しで大変だったという。ある時クチコミでPrusaを知り購入してみたところ、「めちゃくちゃ綺麗!!」と、そこからは次々にPrusaが増えていったそうです。

プリントの綺麗さに加えほぼメンテナンスフリーで稼働でき、購入してからもほぼ大きな問題もなく今では6台のPrusaが稼働しています。

 

3Dプリンタで木型を作るプロセスの中でチャレンジだったこと

3Dプリンターを使って靴作りをしようとはじめたものの、本当に3Dプリントした木型で靴が作れるのか?というところから、3Dプリントした木型が靴作りに耐えられるのかという点が難しかったといいます。

「一人ひとり違う木型を使うため、その木型を使う頻度はせいぜい1度か数回程度。そのためPLAで作る木型は中まで詰めて作る必要はないけれど、薄すぎると壊れてしまい、強度が強すぎると革を貼り付けていく工程で釘が刺さらない。ノズルは0.8mmで木型の積層は0.2mm。木型のバランスを見極め、プリントするパラメータを探す工程が大変でした。」と諏訪部さんは話します。

 

3Dスキャンから形作りまで、試作品を作りながらどのように完成したのか

「まず3Dプリントした木型が靴作りに耐えれるのかところからはじまり、そのあとは足と木型が合うかと一つずつクリアしていきました。従来のオーダーシューズの木型の古い理論は、足を紙の上におき外径の形を写しとり、足の外周を図るという 2.5次元の情報から 3次元の木型を作るという、そもそもの理論として足りていなかったんです。3Dの世界ではそのままの古い理論では靴が作れないという点から、3次元の足データから3次元の木型を作る理論に、伝統的な方法も取り入れ自分たちで繰り返し試作しながら品質向上してきました。」

靴作り自体は従来の作り方を受け継ぎ、変更したのは、木型の設計をコンピューターでするということと、その木型を3Dプリントするというところだけだそうです。

「靴という機能を実現するには、鉄板、カーボンファイバー、革も何種類使うなどいろんな特徴をもった材料が必要。それを3Dプリンターでプリントしたものに置き換えることは、簡単にできることではないんです。」
実用的な靴をつくるため試行錯誤を繰り返し、古い靴作りを残しながら最新のテクノロジーを融合させた新しいイノベーションを成功させたのです。

オーダーメイドのプロセス

初めて受けるほとんどのオーダーは、自分にあうパンプスを見つけられなかったという方ばかりだそうです。注文する際は、まず3D計測し足のデータをとるのに合わせ、直接手で寸法し、靴のデザインやヒール、つま先など8900万通りある既存のデザインからそれぞれ選び、自身の足の形やニーズに合わせて相談・提案をしながら自分にあったものを選びます。

 

サブスクが生まれたきっかけ

「オーダーメイドの靴は従来30万円位と高かったのですが、3Dプリンタの技術により6~7万円程度で提供することができるようになりました。ですが、多くの消費者が購入する靴というのは大体1万円程度が主流のためせっかくオーダーメイドして作った靴を高級品だからと普段には履かずに結局1万円程度で購入したはきづらい靴を履いてしまう。それでは足が痛いという問題も解決せず、お互いの想いがズレてしまっているのではないか」

そのようなお客様の経験や話から「傷をつけたくないということから履かないのであれば傷がついても修理できればいいのではないか。直して履くという習慣が日本にはないので、直しながら履く、良いものを長く履くというきっかけにもなるのでは」そういった想いから履くほどお得になるようにメンテナンスサービスを付け、また月々のサブスクリプションといった形で、金銭的な負担を少なくし、足にあった靴をたくさん履けるようなシステムを考えついたそうです。このサービスのおかげで若い方でも購入でき、オーダー層は幅広いといいます。

サステイナブルな社会に向けて

修理して長く履けるのはもちろんのこと、素材にもこだわっています。牛、羊、ヤギの皮に加え、エゾシカという北海道に生息する野生の鹿を使用しています。このエゾシカは、数が増えすぎ森を枯らし、生態系のバランスを崩してしまう存在となってしまったため、自然とのバランスを保つため獣害駆除で捕獲されていましたが、その革は5%も流通していない状態だったのです。

廃棄されるだけの革に着目し、野生の傷を隠すため絞り染めという手法で一枚一枚違う革に仕上げ、再利用する取り組みをしています。

最後に

「靴の世界は、大量生産する会社とオーダー生産する会社に大きな垣根があるのですが、その垣根がなくなるようなことをやっていきたいと思っています。」と語る諏訪部社長。

「オーダーメイドを大量生産できる方法を常に模索しており、店舗で計測するシステムを、在宅でできるよう3DスキャナーをIpadにつけてお客様の家に届け、自身で計測できるというサービスも進めています。」